帰る場所などが何処に在りましょう

愛すべき人は何処に居ましょう


都合の良い答えは知ってるけど












遭難













物資補給と娯楽と休養の為に立ち寄った島は、

それこそ島全体が遊技場なのかと思う程賑やかだった。

ニコ・ロビンはそのざわめきに飲まれ、雑踏の中を彷徨っている内に

海から大分離れた裏道りまで来てしまった事に気付く。

道の両側にそそり立つ威圧感たっぷりの建物は皆薄暗い内装の店ばかりで、

歩いている人間も服をだらしなく着崩した娼婦や小汚い浮浪者が大多数だ。

ロビンはその暗闇に

何の嫌悪感を抱く事も無く―――むしろ一種の懐かしささえ覚え

当ても無く歩き続ける。

突然、彼女ははたと立ち止まった。



砂の、匂い。



それは懐かしい空気。

何年も前、彼女はいつもこの空気の中に居た。

そして、砂の国を思い出す。

何処までも続く砂漠を

雨を奪った男を

私を囚えて離さない彼を



―――いいえ。



視界に映るは歓楽街。

砂漠ではないわそうよそんな訳無い。

思い直して彼女はまた歩き始める。

もう此処から出なくては。

無意識に焦燥。

早く忘れて仕舞わなければ。

小走りに路地を出て、明るい大通りへ戻る。

前方に高い丘が見えた。

あそこなら。

少し考えて、船に戻るまでの時間を素早く計算して、

あの丘に登ろうと決める。



彼女は走っていた。

ひたすらに、只ひたすらに走り続けて。

足元のヒールが甲高い音を立てても肺が痛んでも頬が上気して息が上がっても、

一心不乱に只その丘を駆け上がる。

頂上に辿り着く頃には、日が落ちかけていた。

荒い呼吸の合間、彼女は呟く。

「………嘘よ……」

砂の匂い。

まただわ。

どうして、

後、ろ。










「―――――…クロコ、ダイル……」







振り返った視線の先に、懐かしい姿。

『あの頃』とは少し変わっているかもしれない。

数ミクロン、細胞のレベルでは。

でも、眼に見える変化なんて微塵も無い。

「………どうして……」

見開いた瞳を動かす事さえ出来ないまま、ロビンは何とか言葉を絞り出した。

唇が乾く。

口内の粘膜は己の役目を忘れて仕舞った様だ。

向かい合った男―――クロコダイルは少し笑った様だった。

「そんなに意外か、ニコ・ロビン」

女の驚き様に、呆れたかの様な表情で男は言う。

しかし、ロビンは未だ瞳と口を開いたまま硬直を続けているしか出来なかった。

それを暫く見つめていたクロコダイルは、こらえきれず苦笑する。

「そう驚くな。……脱獄に思ったより時間が掛かった事は認めるがな」

「……どうして私がここに居る事を?」

ロビンはようやく正気を取り戻した様だ。

少し落ち着いて深呼吸を一度した後、彼女は尋ねた。

その問いに、クロコダイルは事も無げに「只の勘だ」と答える。

彼は今、昔そうだった様に葉巻をふかして堂々とした出で立ちでそこに存在している。

「……少し、痩せたんじゃない?」

そんなクロコダイルを見つめて、ロビンはその整った顔を歪めた。

今直ぐにでも泣き出したい心境だった。

クロコダイルは彼女に微笑んで見せた。

「そうかも知れん。食い物が悪くてな」

そんな人間じみた答えに、ロビンは思わず笑う。

どうしてこの人は何時も、簡単に泣かせてくれないのだろう。

「……そろそろ、帰るか」

特に何も考えていない様な口ぶりの男は、葉巻の煙と共に言葉を吐き出す。

「……えぇ」



帰る場所など、何処に在ると言うのだろう。

未来など、何処に在ると言うのだろう。

解らない。

けれど、都合良い答えなら知ってる。













「行きましょう」

























end













+++++++++++++++++

わーごめんなさい!!!
こんな駄文の中の駄文ですみませんごめんなさい許して下さい!!!(土下座

せつこ様、リク有り難う御座いました!









いや土下座などしないで下さい。既に私がしているからです。
蟻。さんのサイトで行われたリクエスト企画で、リクエストさせていただいたところ、書いていただいたのがこの話です。
ちなみに「クロコダイルとニコ・ロビンの再会話で」と内容まで指定したのは私だけでした・・・。
見事答えていただいた蟻。さんの華麗なサイトはこちらです。
蟻。さん、無茶なリクエストに答えていただき、本当にありがとうございました。

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